移植片対宿主病(GVHD)
患者さん自身の免疫反応により、移植された臓器が攻撃される反応を拒絶反応といいますが、免疫を担う細胞(主にリンパ球)が移植された場合、逆に移植された免疫細胞が患者さんの正常な臓器を「非自己」,つまり異物と認識して攻撃をしてくるのが移植片対宿主病(GVHD)です。
移植から発症するまでの時期が100日以内の場合を急性GVHDと呼び100日以降の場合を慢性GVHDと呼びます。
急性GVHD
重症の場合死に至ることもあり,移植後100日以内の死亡の原因として最も重篤な移植副作用です。急性GVHDは,HLA型が一致した兄弟間でも約半数に合併し,そのうち約4分の1の人が治療を必要とします。非血縁からの移植では,頻度や重症度が増加します。治療はステロイドホルモン剤など,免疫抑制剤を使用します。そのためGVHDの治療によりさらに抵抗力が無くなるため感染症などを合併しやすくなります。感染症が重症の場合は死に至ることもあります。
急性GVHDの症状としては主に次のようなものがあります。
- 皮膚症状
- 手足の皮膚から出やすく,灼熱間,掻痒感,などに伴い,皮膚が赤くなったりします。
- 肝障害
- 肝細胞が障害を受け、黄疸が出る場合もあります。
- 消化管症状
- 腸管が侵されると腸管内に体内の水分が漏出するようになるため、下痢を引き起こします。下痢の程度が強いと失われる水分は数リットルに及び、脱水になります。
- その他
- 熱や吐き気がでたり,まれに口内炎などがみられる方もおります。
慢性GVHD
慢性GVHDの症状は皮膚,肝臓,それに口腔内(口内炎や唾液の減少),目(目の乾き),肺(特殊な肺炎や,閉塞性気管支炎),消化管(下痢や,吸収不良)など,全身に及ぶ可能性があります。
慢性GVHDで直接亡くなる方は多くはありませんが,このような症状により生活の質が低くなってしまうことがあります。そのため慢性GVHDも重症の場合は治療の適応となり,長期間にわたりステロイドホルモン剤や,そのほかの免疫抑制剤を使用することがあります。これらの免疫抑制療法は数年に及ぶ場合があり,感染症や,骨粗鬆症,大腿骨頭壊死などを起こすこともあります。