免疫と拒絶反応

免疫と拒絶反応

免疫と拒絶反応

HLAヒトの体は絶えず細菌、ウイルスなどの病原体にさらされています。さらに人体に害を与える物質(蜂の毒など)が外から侵入してくることもあります。これら異物が侵入した際に、これらを排除または無効化するしくみが免疫とよばれるものです。

免疫反応は主にサイトカインや抗体とよばれるタンパク質や、白血球といわれる細胞によって維持されています。免疫の基本は自己と異なるもの(異物)を排除することです。免疫反応が有効に働くためには排除すべき異物を適切に認識する必要があります。それでは免疫機能はどのような仕組みで自分と異物とを区別しているのでしょうか?

私たちの体の細胞には各個人ごとに異なる目印がついています。これはMHC(Major Histocompatibility Complex)と呼ばれる遺伝子を元に作られる糖タンパク質です。多くの脊椎動物がこのMHCを持っていますが、ヒトの場合はこのMHCはHLA(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球型抗原)と呼ばれています。血液型(ABO型)はA,B,O,ABの4通りですが、HLAは異なる配列を持つ遺伝子がいくつか組み合わされることにより数万通りにもなるため、異物が誤って自己と認識される可能性が非常に低くなっています。

白血球が行く先々の細胞につけられたMHCという目印を見比べ自己と異なる目印をもつ細胞を認識することが免疫反応の開始となります。異物の認識がなされると、様々な経路で、ほかの免疫細胞が活性化され標的を攻撃していきます。

拒絶反応と免疫抑制剤

移植医療では、人体に有益であるはずの免疫が逆に治療の妨げになることがあります。他人の臓器を移植された場合、移植された臓器(移植片)が免疫反応により異物と認識されます。異物として認識された移植片は免疫反応により、排除されてしまうのです。これを拒絶反応と呼んでいます。

今日の移植医療で良好な成績が得られるようになったのは、治療技術の進歩という面もありますが、この拒絶反応を抑えることがある程度可能になったことが大きいのです。拒絶反応を高い確率で克服できるようになったのは比較的最近のことです。拒絶反応を抑えるための薬を免疫抑制剤といいます。この免疫抑制剤の開発によって移植医療は飛躍的に発展してきました。しかし最新の免疫抑制剤を駆使しても約20%の頻度で拒絶反応が起きてしまいます。

拒絶反応に対しては免疫抑制剤を追加(増量)するなどの方法によって治療します。 免疫抑制剤は、文字通り「免疫を抑える薬」です。免疫力が抑えられてしまうと、細菌、ウイルス、カビなどからの攻撃に抵抗する力が弱くなり感染症を起こしやすくなりますので、移植後の致命的な合併症として私たちも強く警戒しています。

移植手術後の6ヶ月間は免疫抑制剤を多く使わなくてはならない期間になります。その間は特に感染症が起こりやすいため、要注意期間になります。術後6ヶ月を過ぎると一般的には、免疫抑制剤の量が減るため感染症の危険性が低下してゆきます。例えば、移植後10ヶ月のお子さんが元気に幼稚園(幼稚園などは園児の間で感染症をやり取りしている環境と言えると思います)に通っていることは特別なことではありません。

matchingまた、免疫抑制剤の関与によって、がんになる可能性が高くなる臓器があります。免疫抑制剤は、基本的には一生内服する必要があります。徐々に量は減りますが、内服が不要になることは無いと考えてください。このため長期的には医療費の問題も無視できません。また、まれですが、ご自分の判断で免疫抑制剤を止めてしまったために移植臓器の障害が非常に強くなることがあります。この意味でも、移植後は「病院とは一生のお付き合いになる」ことをあらかじめご了解ください。

PageTop